財政には多くの財政指標がありますが、その中に「財政健全化法に基づく指標」として四つの指標があり、これが決算カードに記載されています。これらの指標は、特に自治体の財政規模が、他の自治体との比較で理解できるように作られています。そこで分母となる数値が「標準財政規模」という共通の物差しで設定されています。ですからこれら四つの指標を理解するためには、この「標準財政規模」という概念と合わせて理解することが必要となります。

*財政健全化法
 地方公共団体の財政状況を統一的な指標で明らかにし、財政状況の健全化や再生が必要な場合に迅速な対応をとることを目的に作られた法律。平成21年4月に全面施行された。


健全化判断比率

1.健全化判断比率


 財政の健全化を判断する指標として設定されている次の四つの比率をみてみます。なお、この指標は健全化判断比率と呼ばれています。

 ①実質赤字比率
 ②連結赤字比率
 ③実質公債費比率
 ④将来負担比率

 これら四つの指標のうち、いずれかが所定の基準以上となった場合は「財政健全化団体」及び「財政再生団体」となり、次のような義務が発生します。

  位置づけ 義  務
財政健全化団体 自主的な努力を図るべき団体
〇健全化の方策を示す財政健全化計画を議会の議決を経て策定・公表する。
〇実施状況を議会に報告し公表する。

財政再生団体 自主的な健全化を図
ることは困難な団体

〇再生のための計画を議会の議決を経て策定・公表する。

〇実施状況を議会に報告し公表する。



2.健全化判断比率の分母としての標準財政規模


 健全化判断の指標が「比率」になっている理由は次のとおりです。仮に同じ100億円の赤字があった場合でも、例えば、財政規模がおよそ8000億円の横浜市とおよそ800億円の横須賀市では、意味が全く異なります。これを比率で表せば、横浜市の赤字比率は100÷8000×100=1.25、横須賀市は100÷800×100=12.5となり、赤字の度合いは横須賀市は横浜市の10倍となります。(実際には横須賀市は3.76%の黒字です・・・令和2年度)

 このように、健全化判断比率は他の自治体と比較するように作られています。その場合、分母となる財政規模が同じ基準で算出されている必要があります。そこで作られた基準が標準財政規模です。標準財政規模は、「地方公共団体の一般財源の標準的な状態で通常収入されるであろう経常的一般財源の規模」を示すものであるとされています。



3.会計区分と健全化判断比率指標の関連


 次に、四つの指標が対象とする会計区分を示したものが、次の図です。市独自の会計から、市が関わりのある会計まで含むものになっています。

                               
  会計区分 適用範囲  
  一般会計

一般
会計等

普通
会計

  実質赤字比率   連結赤字比率   実質公債費比率   将来負担比率    
  特別会計 公園墓地            
  母子父子寡婦福祉資金貸付            
  公債管理            
  国民健康保険 公営事業会計              
  介護保険              
  後期高齢者医療              
    公営企業会計 水道事業              
  下水道事業              
  病院事業              
  組合等   神奈川県内広域水道企業団                
  神奈川県後期高齢者医療広域連合                
  その他 地方公社 土地開発公社                  
                               


4.実質赤字比率

 一般会計と特別会計の中の三つの会計を合わせた「一般会計等」における赤字の程度を示したものです。赤字がない場合は「-%」で表示されます。

  令和3年度 早期健全化基準 財政再生基準
実質赤字比率 ー%
(9.53%)
11.25% 20%


 ( )内の数字は黒字比率ですから、この指標によれば財政は健全だということになります。ちなみに近年の横須賀市の標準財政規模は約820億円ですから、赤字が92億円で財政健全化団体、赤字が164億円で財政再生団体ということになります。このように、そうとうひどい状況にならないとこの基準にはひっかからないので、黒字比率だからと言って安心ばかりはしていられません。

5.連結実質赤字比率

 「一般会計等」に加え、水道、下水道、病院事業など、料金収入等を主な財源として事業を実施している公営企業会計など、すべての会計を合算して、市全体の赤字の程度を示したものです。

  令和3年度 早期健全化基準 財政再生基準
連結実質赤字 ー%
(25.67%)
16.25% 30%


 公営企業を加えると、実質黒字比率はだいぶ高くなっています。

6.実質公債費比率

 標準財政規模に対する公債費の比率を示したものです。公債費は一般会計等におけるものだけでなく、一般会計等から公営企業への繰出金による公債費もあるため、これを含めた公債費の比率を示すものです。一般会計等だけでなく、市の財政から実質的に支出している公債費、という意味で「実質」公債費比率と呼ばれています。

  令和3年度 早期健全化基準 財政再生基準
実質公債費比率
5.9%

25% 35%



*神奈川県内広域水道企業団
 神奈川県・横浜市・川崎市・横須賀市の4構成団体に水道用水を供給する組合。三保ダムと宮ケ瀬ダムから供給を得ている。

*神奈川後期高齢者医療広域連合
 神奈川県内すべての市町村が加入する広域連合で、保険料を決めたり医療の給付を行う。市町村は保険料徴収と窓口業務を行う。被保険者証は、この広域連合が交付している。


7.将来負担比率


 一般会計・特別会計に加え、一部事務組合や土地開発公社も含め、今後負担しなくてはならない負債の総額が標準財政規模に占める割合を示したものです。

  令和3年度 早期健全化基準 財政再生基準

将来負担比率

22.2% 350% なし


 平成19年度には96.2%もあった将来負担比率が年々減少し、27年度には55.6%となりましたが、30年度には36.5%、令和2年度は31.8%にさがっています。

8.資金不足比率


 地方財政の健全化に関する法律による指標としてもう一つ、資金不足比率というものがあります。これは、公営企業ごとの資金不足を、事業規模である料金収入の規模と比較して、経営状況の深刻度を示したものです。

 横須賀市においては、水道事業・下水道事業・病院事業とも、資金不足は発生していません。

参考文献
・「横須賀市財政基本計画」
・「市町村財政分析」自治体研究社
データ
・「令和3年度決算状況」等 横須賀市HP